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森のフォーラム

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Re:短編小説

[ID:sakutyan]
 恋愛小説に初挑戦してみます。お見苦しかったら澄みません。


「なぁ、いつまで黙ってるんだよ」
 大樹は夕日で赤く染まった海を見つめながら呟いた。
「う、うん――」
 晴香は大樹の横で赤く揺らぐ波を眺めながら、俯いた。
 優しく肌を撫でるような風が、ほんのりと海の香りを運び、潮の香りが晴香の鼻をくすぐった。
 大樹をここに呼び出したのは晴香であった。
 二人が初めて出会ったこの場所に。
 その時も今日のように、太陽は大きく、海はきらきらと輝きを放つ赤いワインのようであった。
 晴香は顔を上げると、意を決して口を開いた。
「大樹、最近あまりメールも返してくれないしさ、電話でもあたしと話すのかったるそうだし――」
 言葉途中で再び俯く晴香に大樹は、一瞬目をやると小さく微笑んだ。
「ちょっと忙しかったんだ。悪い」
 いつもと変わらない大樹の言葉に、晴香の中で怒りがこみ上げる。
「忙しいって、なに? あんた部活もしてないでしょ?」
「いや、色々とさ――」
 取り繕おうとする大樹の言葉が、晴香の怒りに油を注いだ。
「やっぱりあたしに言えないことなんでしょ?」
 う――んと、唸りながら、大樹は心なしか眉を寄せ、赤く滲んだ夕日を眺める。
 その大樹の様子に晴香は、自分の抱いている不安が的中していたことを実感し、とてつもない悲しみが胸の奥からこみ上げてきた。
「別れましょう――」
 きっと他に好きな人ができたに違いない――晴香の声は掠れていた。
「残念だな――」
 大樹は呟くとポケットに手を入れ、中身を探った。
「受け取ってくれるかい?」
 大樹は晴香の目の前に小さな箱を差し出した。
 晴香は恐る恐る大樹の手に乗った小さな箱を開けるとそこには、質素ではあるが、花の模様をあしらったシルバーリングが夕日の光を受け、輝いていた。
「これって――」
「――ああ。卒業して、仕事も落ち着いたら、結婚してくれるか?」
 電話も出ないし、メールも返ってこない。忙しい理由って、これを買う為にバイトしてたんだ――晴香は大樹を信じていなかった自分にやり場のない憤りを感じ、やがてそれは、返信したくてもできずにいた大樹に対し、申し訳なさに変わった。
 理由も話せず辛かったであろうと。
「ごめん――ごめんね、大樹。本当にゴメン」
 晴香の目から大粒の涙が溢れ、指輪を握りしめる晴香の手に滴り落ちた。
「かまわないさ――」
 大樹は涙で濡れた晴香の手を握ると、優しく唇を重ねた。
 海の彼方の太陽は、仕事を終えたかのごとく姿を消し、漆黒の夜空をうっすらと赤みを帯びた空が海にとけ込んでいた。
 まるで二人の愛がいつまでもこの海に残るかのように。

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