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Re:短編小説
まなか
[ID:shiroikotori]
せりふが非常に少ないです。これは特色です。特色だと思って改善は諦めて……います……。
場景描写ばっかり多くて自分でも困ってるんだ。
* * * * *
〈二人〉
久しぶりに行った学校は、亜紗(あさ)を煙たげな空気で包んだ。滅多に教室に顔を出さないから、友達なんてものはいず。教室の生徒は見知った人間たちの中ただ一つ異質なモノとして少女を捉える。
疎外はなんとも思いはしないけど、彼らが自分を除け者にする時のわずかな気遣いが、少し煩わしかった。
クラスメイトなんて言うのも憚られるほど希薄な繋がり、それでも今は同じ部屋で同じ内容を勉強しているその事に、違和感を感じる。
無意義な時間だ。
進学に必要な出席日数の消化、勉学、そういう意義はあるけれど……。
教師の声と、黒板にチョークがぶつかる音が無意識の内に聞こえていた。大きく取られた窓から眺める、美しい白縹色の空。
教師に問題の解を問われたが、亜紗は立ち上がらず、空を見て頬杖をついていた。
そうして、乾いた、退屈な時間は過ぎる。無為に無気力にただ居る、それだけで時は経過してくれるのだからいい。
放課後、部活を持たない亜紗は鞄を取った。その時声をかけてくる人間はいるはずもない。
校門の前まで来たところで、停止したバイクのエンジン音に顔を上げた。
「アサ」金髪の、見ただけでわかる非行少年。
「三藤」と呼んだ。
「乗れ」一つしかないヘルメットを投げてくる。
低い騒音を奏でる機体の後部に、スカートで跨った。
帰宅部の生徒が、凶暴そうな男と、そのバイクの後ろに座った亜紗に怯えるようにしているのが見えたが、至極どうでもいい事である。
バイクが走り出してから、後ろに手を付いた。「落ちるぞ」と注意されてもそのまま。
空が夕焼けに赤く染まりだしていた。
螺旋状になった道路の坂を駆け上り、風を裂いて走り続けた。二人とも同じ場所へ帰るために。
同居しているけれど、目の前の男は恋人ではない。友人とも微妙に違う。親しくもなく、でも "近い" 、存在。
男は、亜紗が外出すると必ずバイクで送り迎えした。
その後ろに撫で付けた金髪が風に揺れる。
逆光で黒ずんだビルの影が連なってできた地平線の上に、黄昏の大空が広がっているのを、少女は透明なバイザー越しに眺めた。
冷気を帯び始めた風を浴びてそれに息を詰まらせ、もう一人の存在を認めながら、赤い幽光を満たし輝く夕の空を目に感じて走る。この時はほかの何より快く、また男も同じように思っている事を知っていた。
* * * * *
毎回一番悩むのはタイトルです。付け忘れることも……ある。
虎縞さんの文章が好きだ。
文章力高い人が多くて読むの楽しみにしてます。
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