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森のフォーラム

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Re:短編小説

[ID:rio0625]
これは、絶妙な距離感だ。
愛を知りながらも、滅多に触れることはない。笑い合うことはあっても、それは刹那。愛を囁き合っても、必要以上に入り込まない。第三者から見ればなんてもどかしく見えることだろうか。しかし当の本人たちにとってみれば、これほどよい距離感はないというのだからなんとも不思議な話である。
愛し合っていることに変わりはないという、どこか達観した愛し方。逆に相手が急に自分を求めてきたら、それこそなにかあったのだと思い知らされるという。そう言うときでさえ、笑って相手が求めるさまを演じる彼らは、やはり愛し合っていると認めざるを得ない。
そんなことを考えながら、自室の窓を開けぼんやりと頬杖をついて外を眺めていた晴香は、天候の変化に小さく「あ…」と呟いた。先ほどから薄暗く覆っていた雲。昼を過ぎ、夕刻に向かう今頃になって水を落としだしていた。音は優しく柔らかく、細やかな雨粒といえどもこれほどの激しさならば、おそらくしばらくすると大地に水溜りをいくつも作り上げるだろう。立ち上がるとテラスに向かい、干しっぱなしになっていた洗濯物を取りに出る。そこでふと、気付いた。
二つ並んだ傘が大学から出てくるのが見えた。そしてその二人は紛れもなく、先ほど晴香自身が考えていた彼らだった。歩調を合わせてくれない彼の後ろを足早についていく彼女。二人で帰っているなんて稀である。珍しい、そう思って思わず彼らに見入った。
恋人同士なら、一つの傘に収まればいいものを。そうすれば彼も彼女の歩調に合わせざるを得なくなる。ただ、それをしないのが彼らで、しないことを苦に思わないらしい。遅いよ、君。そう言いたげに止まる彼に、必死についていこうとする彼女はあまりにも健気だ。私はそこで彼らを眺めるのをやめ、部屋に入った。夏にも関わらず半袖で肌寒いと感じる気温。ホットコーヒーを作りながら、そこでもう一度あることに気づいた。
そういえば彼女、今日は大学の講座をとっていないはずだ。そして二人で帰宅の珍しい光景。そして突然の雨。
途端に全てが繋がって、小さく笑うとコーヒーを飲みほした。



参加させていただきました。
またできれば参加させていただきたいです。
失礼しました。

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