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森のフォーラム

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Re:短編小説
まなか
[ID:shiroikotori]
〈オトメゴコロ〉

 真実は一つだけ、なんてどこかの小説の名探偵が言うことで、刑事事件に関わることさえまずない凡常の私たちにとって、 〈ホントウ〉 とは何重にも重なった曖昧な物である。
 私たちの 〈ホントウ〉 とはもっぱら、密室で起こった殺人とかに展開される、物理的な理に支えられた推理は通用しない、ココロの中のことだから。
 しかも私は女だから、胸に秘めるのは 〈複雑〉 の代名詞オトメゴコロ。
 そんな私たちの心をひらくには、銀行の金庫をこじ開ける犯罪技術より高度な手法と、柔軟さとセンスが必要で、その思考回路は名探偵はもちろん、お偉い学者様も推理できない。
 迷宮ラビリンスや、怪奇事件の謎、手品師の魔法よりも難解煩雑不思議、それが私たちだ。
 ――携帯をぱちりと畳んだ。二つ折りにしても私の手の平より薄い携帯は、スタイリッシュだけど、なんでもかんでもコンパクトにすればいいってもんでもないと思う。だけどブ厚い携帯はダサイ感じがする――って、みんな言ってる――し、旧型、って響きがイヤだからこれにしている。色だけはお気に入りだ。目に優しい色のピンク。
 メールはカレシからだった。最近デートの誘いがしつこい。焦っているみたいだ。私がツレないから。……わかっていて速く返信してあげない私は、性悪なんだろう。
 よそよそしい振る舞いをする理由は、単純。ウザったくなってきたからだ。そう言うとみんな気安く「別れれば?」なんていうけど、まだ好き。なんだろう、 "束縛がウザったい" ? でも束縛されないのもそれはそれでムカつく。
 要は恋の火照りが冷めてきて、始終ひっついていなくてもよくなったのだろう。恋愛の絶頂は、両思いになった瞬間。結婚ってのもあるけど、私はそれをまだ知らない。いとこのお姉さんのウエディングドレス姿はとっても綺麗だった。いいなぁ、結婚。
 したくないけど。まだ。
 携帯を見下ろした。返信を打ち始める。
 相手の、愛情へ縋る気持ちに付け込んで、好意を装い酷いことを言う――そういうのが一番人をいたぶって傷付けるのだと、わかってはいるけれど。
 短いメールを送ってまた携帯を閉じた。持ってないと落ち着かないんだ。握り心地はよくない。やっぱりもうちょっと厚いのがいいなぁ。
 なんにしよ、私は追いかける恋愛が合うタチなのだろう。愛情が薄れていくのは少しさびしいから、今度はそっけない人を好きになれたらいい。でもあまり報われない恋がキライでもあった。疲れるし。
 とりあえず、まだ、好きだ。
 そう、数分のあいだにカレシへの気持ちを纏めると、明日友達と行くカラオケのことを考えだした。

 * * * * *

 絶賛思春期。

 一人称は心理描写がしやすくて好きです。三人称派だけど。

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