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森のフォーラム

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Re:短編小説
美里
[ID:want2love]
※観覧注意

【此ノ花】

僕はそっとソレを襖から覗いていた。明くる日も、明くる日も。
あの子は美しい。成人した僕よりも、恐らく2才ほど下だけれど、それはそれは愛に満ちた瞳を持っていた。そしてその眼差しを、ソレらに向けていた。今はソレ、単体だ。
あの子は今は裸体だ。いつもそれをするときは肌を露出させ、ソレと一緒に深い桶のようなものに入る。それが僕の好奇心と嫌悪感を同時に奮い立たせる。
僕は、彼女に惚れていた。
「あら……今日もまた来たのね」
彼女は振り向かずにソレの腕に湯をかける。部屋の中とはいえ隙間だらけでは、視界が悪くなったりしない。だから僕はもう身を隠せないことを覚悟していた。
「……ごめん」
「別に、珍しかったら見ていってもいいわよ?」
見世物じゃないのはわかってる。だから上手く返事も返せなかったし、気味が悪いと思うのだ。
これをやっているときの彼女は綺麗だ。だけど異常だからやめてほしい。これが僕の本音。
「……なぁ、なんでこないなことやってるん?こいつら汚いで」
未だに抜けない方言を意識することも忘れて、僕はどうやったらこれをやめてくれるか考えた。彼女は振り向いた。その胸に、片脚のない武士の死体を抱いていた。あの子と呼べる人は、笑っていた。
「それでも私には立派な性の対象よ」
性的交錯――あの子は死体をこよなく愛する。
「最初はこの人たちの罪を流すだとか、棺桶に入る前だからとか、いろいろ考えてたけど、今はこういう理由なの」
あの子の異常性愛の前では、僕など無力だ。
あの子は死体の身体を撫でるように洗うと、僕をジッと見詰めた。そこには一切の愛もなかったが、何かを見定める気配は感じとれた。
僕にだってそれが何かわかってる。だから踵を返して逃げ出した。
僕は、彼女に惚れていた。
家に駆け込み、研いだばかりの包丁を手にする。それを手にしてまたあの部屋に戻った。彼女はもう死体から離れていた。にっこり笑う綺麗な顔。
好きだ……
「おいで――綺麗になりたいのね」
僕は彼女の目の前にひざまづいた。彼女の優しい目は今、確かに僕に向けられている。
嗚呼、愛されているよ。
心臓を一突き。僕の血液が目の前の彼女を汚していく。
幸せを今この手に、掴んだ瞬間。
彼女もあの子も、笑っていた。

僕は彼女に惚れていた。
あの子は僕に惚れる。

*

湯灌のおはなし。それでいてネクロフィリアっていうんだっけ、そんなお話。
死体だけしか愛せない女を愛した話。

凄い話を書いてしまった……
これはイカンだろーって思われましたら、スレ主様消してやってください(笑)

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