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Re:短編小説
城平ろくむ
[ID:ranean]
久し振りに筆を執ったので
お題:幼馴染×蛞蝓
『僕とアイツ』
僕は蝸牛。
家という名の殻に閉じ込もっている。典型的な引きこもりというやつだ。この世界のすべてが嫌になって、自分の世界に入った僕だったけれど、それでも幼馴染のアイツだけは今でも僕に構ってくる。それは僕も嫌ではなかった。
僕が蝸牛なら、アイツは蛞蝓。
蛞蝓好きが高じて大学に行って研究までしているくらいだし。アイツは僕の家に来ては外の話をしてくれるのだが、八割くらいは蛞蝓の話だったりする。
例えば、蛞蝓はビールが好きという話。何故か寄ってくるそうだ。そんな事を延々話し続ける。僕は蛞蝓をあまり好きではないけれど、話をするアイツの輝く眼が好きだった。
アイツは今日も僕の部屋に来た。
「お前、友達いないのな」
「引きこもりのお前よりましさ。話せる奴は大学にもいるから」
こうやってからかい合えるのも、幼馴染ゆえか。
「なぁ、お前知ってるか?」
アイツがその文句を言うと、いつも蛞蝓の話が始まる。
「いいや」
僕もお決まりの答えを返すのが常だ。
――蛞蝓にも殻や足がある。
アイツは言った。動きは遅くとも、その足のようなもので一歩一歩進んでいる。蛞蝓の殻は、蝸牛のそれが小さく進化したものだそうだ。
「自由に動くため」
だと。そう、アイツは言った。
その言葉を聞いた時、何故か僕の頬に涙が伝った。
「どうかしたのか?」
蝸牛の殻に閉じこもった僕は、きっと蛞蝓であるアイツの自由さを羨ましく感じていたんだろう。今の状況を心のどこかで改善したいと思っていて、それが涙として溢れ出たのだ。
この殻を出る時なのかも、しれない。
そう思った。
僕は蝸牛。
殻を取った蝸牛は死ぬらしい。
だが少しずつでも僕は前に進んでいる。蝸牛は蛞蝓にはなれないけれど、殻から出れば歩いていける。
確実にアイツは蛞蝓のように歩いた跡を残して僕の前を行っている。あの日アイツがしてくれた話が、僕を動かしている。
アイツにそんな意図があったのかどうかは今もわからないけれども。
僕は今、蝸牛の研究をしている。
蛞蝓のアイツには適わないかもしれないけれど、いつか張り合えるようになりたいと思っている。
蝸牛と蛞蝓、俺とアイツは今も仲良くやっているよ。
「僕」も「アイツ」も性別不明だとおもしろいかもしれませんね
また書いたらきます
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