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森のフォーラム

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Re:短編小説
せれん
[ID:seiren329]
『クレイジーガール』

水をぶっかけられた。
冷たくて喉に流し込めば美味しい筈のソレは、私のつむじから毛先までを見事にびしょびしょにした。
ぶっちゃけ寒い。カレンダーは10月を示していて、ランタンとか魔女とかハロウィンチックな絵が描かれていた。
そこまでは良いのだ。それからが気に入らない。
私は事実上あの少年の恋人であって、でもってその少年はえらくおモテになる。
顔が良いし笑顔も爽やかだし、スポーツ万能だし、ねえ。
女の子のひとりやふたり、少年を好きにならない筈がない。のだ。
だからこうして、見たことも話したことも無い少女に嫌味を言われたり嫌がらせをされたり、という事は私にとって日常茶飯事なのだ。だって私は少年の恋人だから。
「貴女なんかが相手にされると思って? いい加減付き纏うのは止しなさいよ、ああ忌々しい! 私の方がよっぽどお似合いだわ!」
五月蝿い。五月蝿いな。
少女は酷く歪んだ顔で叫んだ。金切り声。なんてヒステリックな。
まるで昼ドラ、と かろうじてマトモに動く頭の隅で呟いた。

ばちんっ。
なんて凄い音を効果音に私は少女の頬を叩いた。いわゆる平手打ちですね。
私が少年に似合ってないとかそういうのは分かってるんだよ。
本当に、イラっとくることばかりだ。
一々しつけーなやんのかてめえ、アアーン?的な視線を送ると、少女は瞳に涙をいっぱい溜めてわなわな震えて、そして扉を乱暴に開けて去っていく。うん、勝った!
さて、と、深呼吸を繰り返して、先ほどからぶるぶる震えている手足を抑える努力をする。
でもやっぱりぶるぶるぶるぶる止まる事を知らない四肢は、まるで笑っているみたいだった。
あのねえ少女、これだけ言われりゃ分かるよ。
自分でも分かってる。分かってるつもりなんだ。でも離れるなんてお断りなんだ。
だって私は少年の、こいびとだからね。
ふふふ、と些か自嘲的な笑みを顔に浮かべてうずくまる。キツイ。
こいってなんだ。あいってなんだ。
つい此の間つい最近少年に向かって大好き愛してるって言ったはずなのにもう忘れてしまった。忘れてしまったよ。

――少年が此の場に駆けつけるのは、もう少し後の話。



***
また、参加させて貰います。
素敵な作品が多くて、いつも覗くたびににやにやします。

 

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