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森のフォーラム

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Re:短編小説
ニワトリ
[ID:niwatori0519]
『手』


 繋いだ彼の手から伝わってきたのは、心に染み込む優しさだった。冷えきった私の手を包み込むように握り、時折こちらを向いては「寒いね」と笑いかけてくれる彼。私はと言えば、俯いてばかりでろくな返事も出来やしない。
 私は人の温かさに慣れていないのだ。だから、どうにも背中がむず痒くなって、頬は意味もなく火照ってしまう。つまりは恥ずかしいという簡単な話し。
 家に向かって、人通りの少なくなった道を二人で歩く。一瞬吹きつけた北風に、彼は眉根を寄せてうーと唸った。
「…部屋寒いのやだなぁ」
「だねぇ」
「暖房つけてもすぐに暖かくならないしなー」
「しょうがないよ」
 彼はとても寒がりだ。手はこんなに温かいのに、冬場はいつも鼻をすすって縮こまり、寒い寒いとぼやいている。もしかしたら、体の熱が指先に全て集まっているのかもしれない。そう考えたら、彼がとても愛しくなって、私の熱を分けてあげたくなった。
 ギュッと握る。彼のおかげで人肌になった右手で。
 彼は私の手を柔らかく握り返して、「あったかいね」と微笑んだ。

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